雨の夜に思い出すこと。

冬。雨の夜中に傘がなくて、どしゃ降りでもないし帰るだけだしまぁいいかと歩いていたら声をかけられた。

「よかったらこれ。ぼくの家ここなんで」

と、スーツ姿の中年男性。

そう、その人は民家の駐車場で傘を差して突っ立っていた。

夜中に自宅の駐車場で傘を差し、車の横に立っているスーツ姿の男性。

事情が全くわからない。

誰かを待っていたのか。

あの冷たい雨の中、傘を差してわざわざ外で待つってどんな事情だろう。

車もあるし、家もあるのに。

大人しい物言いが余計に不気味で傘を断って帰宅した。

あの傘を受け取っていたらどうなっていたのかなー。

何もないだろうけど、数年経った今あの人は幽霊だったんじゃないかと思うほど怖い。

だってやっぱりおかしいじゃないの。